自作PCユーザーやゲーマーにとって、グラフィックボードの「次世代」という言葉ほど胸を躍らせるものはありません。しかし、今まさに私たちの期待を少しだけクールダウンさせる、それでいて技術的な信頼性を裏付けるような、非常に興味深いニュースが舞い込んできました。
AMDの次世代GPU、通称「RDNA 5」を巡る噂です。一時は「サムスン製造に切り替わるのではないか」という憶測がネットを騒がせましたが、どうやら真実はもっと堅実で、かつ少しだけ忍耐が必要な場所にあるようです。
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「サムスン説」を秒で否定。AMDが選んだのは、やはり“あの相棒”だった
ここ数日、ハードウェア界隈では「AMDが次期Radeonをサムスン・ファウンドリの2nmや4nmで作るらしい」という噂が、希望的観測も交えて拡散されました。コストダウンを期待する声もありましたが、信頼できる著名リーカーKepler_L2氏は、この話を「ナンセンスだ」と一蹴しました。
彼が明かした内情によれば、次世代RadeonチップはすでにTSMCのN3Pプロセスで「テープアウト(設計完了、試作段階への移行)」を済ませているとのこと。
正直なところ、私もこのニュースを聞いて少しホッとしました。最先端のグラボに求められるのは、何よりも「安定した爆速」です。実績のあるTSMC、しかもN3Pという改良版ノードを採用するということは、AMDが冒険よりも「確実にNVIDIAの牙城を崩すための完成度」を選んだことを意味します。
製造パートナーが変わらないという事実は、私たちユーザーにとっても「予測可能な進化」として安心材料になるはずです。

2027年半ばまでお預け?2026年が「静かな年」になる理由
しかし、喜びと同時に「えっ、そんなに先なの?」という戸惑いを感じた方も多いでしょう。最新のリークでは、RDNA 5の発売時期は「2027年半ば」と示唆されています。2026年中の発売を期待していた層にとっては、少し冷や水を浴びせられた格好です。
Highly doubt for high-end chips https://t.co/k44a6HxtkK
— 포시포시 (@harukaze5719) December 25, 2025
なぜこれほど時間がかかるのか。そこには二つの現実的な壁があります。
- 検証と生産のラグ:テープアウトから量産、そして店頭に並ぶまでには、通常1年半から2年近い期間を要します。
- 部品コストの荒波:メモリ(DRAM)の高騰や供給不足が続くなか、2026年に無理やり発売しても、私たちが買えるような価格にならない可能性があるのです。
AMDが口を閉ざしているのは、期待値を煽りすぎて自爆するのを防ぐための「戦略的沈黙」かもしれません。2026年は、派手な新製品発表よりも、じっくりと牙を研ぐ期間になる。
そう考えると、今持っているグラボをもう少し愛でるか、あるいは間近に迫る「RDNA 4(仮)」で一旦手を打つか、という現実的な選択肢が見えてきます。
ソニーとの共同開発「Project Amethyst」がもたらす未来
ただ待たされるだけではありません。RDNA 5には、ソニーとの共同プロジェクト「Project Amethyst(プロジェクト・アメジスト)」で培われた技術が惜しみなく投入される見込みです。
具体的には、パストレーシングを劇的に高速化する「Radianceコア」や、AI処理に特化した「Neural Array」など。これらは次世代PlayStation(PS6?)への搭載も噂されている技術であり、PC版Radeonでも「家庭用ゲーム機の最適化をそのままPCで享受できる」という、AMDならではの強みが爆発する可能性があります。
「AI機能とレイトレーシング」。AMDがこれまでNVIDIAに一歩譲っていた分野で、ついに本気のリベンジが始まろうとしているのです。

