次世代機の噂が絶えないゲーム業界。その中でも特に、世界中のファンが固唾をのんで「その時」を待っているのが、任天堂の新型ハード、通称「Switch 2」の存在でしょう。革新的な遊びを提供し続けてきた任天堂が、次に我々をどんな世界へ誘ってくれるのか、期待は高まるばかりです。
そんな中、ゲーム業界に激震が走る特許情報が飛び込んできました。
2025年8月7日に公開された任天堂の新たな特許。それは、Switch 2のJoy-Conに「クランク」と「クリック可能なホイール」という、前代未聞のアクセサリーを追加する可能性を示唆するものだったのです。
このニュースは、新しい遊びへの期待感を抱かせる一方で、ある独創的な携帯ゲーム機との「既視感」を巡り、大きな波紋を広げています。果たしてこれは任天堂らしい新たな挑戦なのか、それとも、他社のアイデアの単なる「模倣」なのでしょうか。
この記事では、今回明らかになった特許の詳細を徹底的に分析し、その機能性や想定される使い方、そして避けては通れない「Playdate」との類似点について、深く掘り下げていきます。
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進化が止まらない!Switch2の新たな可能性


特許から浮かび上がる「二つの奇妙なアクセサリー」
今回の情報は、任天堂の特許を専門に追いかける「Nintendo Patents Watch」によって明らかにされました。2024年2月に初めて提出され、2025年8月7日に公開されたこれらの特許は、私たちのゲーム体験を根底から変えてしまうかもしれない、二つのユニークなアクセサリーの存在を示しています。
- 回転をゲームに伝える「クランク」
- 謎多き入力デバイス「クリックホイール」
これらは、Joy-Conに新たに追加されるマウスセンサーを利用して機能すると見られています。任天堂は過去にも、Wiiリモコンのポインター機能や、リングフィットアドベンチャーのリングコンなど、直感的で新しい操作性を生み出してきました。今回の特許も、その系譜に連なる挑戦的な試みであることは間違いありません。
しかし、その内容を詳しく見れば見るほど、一つの疑問が頭をもたげてくるのです。

核心は「Playdate」との類似性 ― クランクが拓く新たな遊びとは?
まず注目すべきは「クランク」アクセサリーです。特許図によると、これはJoy-Conの側面に装着する回転式のディスクであり、その回転運動をJoy-Conに内蔵されたマウスセンサーが読み取る仕組みのようです。
この「クランクを回す」というアナログな操作。一体どのようなゲームで活かされるのでしょうか。
最も有力視されているのが「釣りゲーム」での活用です。リールを巻くあの感覚を、クランクを回すことでリアルに再現できるとしたら、これまでにない没入感を生み出すことができるでしょう。他にも、ぜんまい式のおもちゃを動かしたり、金庫のダイヤルを回したりと、アナログな回転操作が求められる様々なミニゲームへの応用が期待されます。
しかし、ゲームファン、特にインディーゲームに精通している人であれば、この「クランク付きのゲーム機」と聞いて、あるデバイスを思い出さずにはいられないはずです。
そう、Panic社が開発した独創的な携帯ゲーム機「Playdate」です。

Playdateは、その黄色く愛らしいボディの側面に、ゲーム操作の根幹をなす「クランク」を搭載していることで世界的に知られています。このクランクを使ったユニークなゲーム体験は、Playdateの最大の魅力であり、そのアイデンティティそのものです。
ここで一つの皮肉な事実が浮かび上がります。任天堂は、自社のキャラクターや技術といった知的財産の保護には極めて厳しい姿勢で臨むことで有名です。過去には、数多くのファンメイドゲームやエミュレーターに対して、断固たる法的措置を取ってきました。
その任天堂が、近年で最もユニークと評される携帯ゲーム機の象徴的な機能を、自社の主力製品に取り入れようとしている。この事実は、一部のファンから「他社のアイデアの盗用ではないか」という厳しい目を向けられる原因となっています。
もちろん、特許の内容がPlaydateの技術を直接的に侵害するものではない可能性は高いですが、そのコンセプトの類似性は、倫理的な観点から議論を呼ぶことになるかもしれません。

真の謎は「クリックホイール」― 任天堂が描く未来の操作性
クランクの用途がある程度想像できる一方で、もう一つのアクセサリー「クリックホイール」は、深い謎に包まれています。
特許情報によれば、このホイールはクリック操作も可能とのこと。しかし、その取り付け位置が非常に直感的ではないのです。
Joy-Conをマウスのようにテーブルに置いて使う場合、このクリックホイールは「テーブルに接する面」、つまり下側に取り付けられるように描かれています。これでは、マウスとして使用しながらホイールを操作するのは至難の業です。一体、任天堂はどのような使い方を想定しているのでしょうか。
考えられる仮説はいくつかあります。
- ミニチュアステアリングとしての活用
Joy-Conを横持ちにした際に、このホイールがレースゲームのステアリングとして機能するのかもしれません。クリック機能は、アイテムの使用やドリフトといった操作に割り当てられる可能性があります。 - 特定のミニゲーム専用コントローラー
特定のゲームやモードでのみ使用される、特殊な入力デバイスとしての役割も考えられます。例えば、音量を調整するDJのターンテーブルのような操作や、何かをスクロールさせるような独自のミニゲームに組み込まれるのかもしれません。 - 全く新しい操作体系の提案
我々の想像の斜め上を行く、全く新しい操作体系の一部である可能性も否定できません。Joy-Conの向きや持ち方を工夫することで、この一見不便に見える配置が、実は革新的な意味を持つのかもしれません。
いずれにせよ、このクリックホイールは、任天堂の「遊び心」と「実験精神」が色濃く反映されたアクセサリーと言えるでしょう。

まとめ
今回明らかになった、Switch 2のJoy-Conに「クランク」と「クリックホイール」を追加する特許。それは、次世代機への期待を膨らませると同時に、多くの疑問と議論を投げかけるものでした。
クランクがもたらすであろうリアルな操作感は、特に釣りゲームファンにとっては朗報かもしれません。しかし、その裏でちらつく「Playdate」の影は、任天堂の企業姿勢そのものを問うきっかけにもなり得ます。知的財産の守護者としての一面と、他社の優れたアイデアを巧みに取り込む柔軟性。その二面性が、今回改めて浮き彫りになった形です。
そして、謎多きクリックホイールの存在は、任天堂が決して現状維持に甘んじることなく、常に新しい「遊びの発明」を目指していることの証左と言えるでしょう。
もちろん、忘れてはならないのは、特許の出願が必ずしも製品化に結びつくわけではないという事実です。任天堂の社内には、製品化されることなく消えていった無数の奇抜なアイデアが眠っているはずです。今回のアクセサリーも、そうした幻のアイデアの一つとして歴史に埋もれてしまう可能性は十分にあります。