スペックの数値競争が頭打ちを見せるスマートフォン市場で、シャオミが打ち出した一手は「背面に貼り付ける楽器」という異色の飛び道具だった。自社最新のフラッグシップ機だけでなく、競合のiPhoneにまで対応させた新アクセサリー「ポケットギター」。一見すると奇抜なトイガジェットだが、モバイル体験の拡張という観点で見ると、実に計算された戦略が透けて見える。
中国で開催された新製品発表会。主役であるフラッグシップ「Xiaomi 18 Pro」「Xiaomi 18 Pro Max」や小型スマートウォッチ「Watch S5」の陰で、ひときわ異彩を放っていたのがこの製品だ。価格は599人民元(約89ドル)、カラーはブラックとレッドの2色を用意する。


本体はポケットに収まるコンパクト設計で、接続はBluetooth。端末の背面にマグネットで吸着し、普段は卓上スタンドとしても機能する仕掛けを施した。内蔵バッテリーは630mAh。1日1時間のプレイなら30日以上充電要らずで動くという、タフなスタミナ性能も抜かりがない。
盤面に並ぶのは複数のタッチセンサー式ボタン。画面越しではなく物理的なセンサーを指先でタップすることで、ギターのコードや弦の響きをシミュレートする。中国の大手音楽・カラオケプラットフォーム「Changba(唱吧)」と連動し、1万5000曲を超えるライセンス楽曲に合わせてセッションを楽しむ仕様だ。Xiaomi 18 Proシリーズでは背面ディスプレイを演奏アシストに活用するが、驚くべきはiOS 14以降を搭載したiPhoneでもほぼ同等の体験を可能にした点にある。
ライバルであるiPhoneのMagSafeエコシステムに相乗りしてまで、なぜ他社ユーザーを取り込みにいくのか。ここには、ハードウェア単体の囲い込みから「体験のプラットフォーム化」へと舵を切るシャオミのしたたかさがある。

スマートフォン背面のマグネット機構は、これまで充電器やカードケース、簡易スタンドといった実用一辺倒の用途に縛られてきた。シャオミはそのデッドスペースを「音を鳴らすインターフェース」として再定義したわけだ。しかも、単なるオモチャで終わらせず、唱吧の持つ膨大な楽曲データベースと直結させることで、飽きさせないエンタメとしての実用性を確保している。
中国固有の配信プラットフォームに深く依存している以上、このポケットギターがそのままグローバルや日本市場に上陸する可能性は極めて低い。それでも、コモディティ化が進むスマートフォンにおいて、背面に吸着させるモジュールひとつで別ジャンルの体験へと化けさせるアプローチは鮮烈だ。スマートフォンの「次」を模索するメーカーの遊び心と野心が、この小さなギターには確かに詰まっている。
Source:Xiaomi

